「あ・うん」 1989年日 評価4.3


監督:降旗康男
出演:高倉健、富司純子、板東英二、富田靖子、宮本信子、真木蔵人、大滝秀治他

1992年、2025年12月観賞

 第二次世界大戦勃発の数年前の東京。第一次世界大戦時(と思われる)の戦友であり、現在でも親友同士である軍需産業で富を築いた門倉と製薬会社の課長である水田、水田の美しい妻たみを中心に、昭和初期の友情と許されぬ恋愛慕情を描いた秀作。

 初めの20分程度は、一介のサラリーマンの女房としては場違いの美しさと雰囲気がある、17年振りに女優として復帰した富司純子演じるたみと、水田家のなんとなくわざとらしいセリフ回しに違和感を持ったが、ストーリーの展開と時間経過で慣れてくることでその感覚は薄まってくる。

 そして段々と富司純子の外見と内面の美しさこそ、門倉が精神的愛を貫くまっとうな理由であることがわかってくるし、若干、板東英二の素人っぽい演技(素人だからしょうがないか。まぁ頑張っている)は気になるが、門倉と水田との親友ぶりは実に丁寧に描かれていて、門倉のたみに対する愛情と、水田の娘の初恋を重ね合わせて、双方静かな終焉を迎えていく終盤に向け、昭和初期の人々の思想も交えて、その時代の情緒が醸成されることで突然と言っていい終幕がかなりの余韻を残す。

 門倉は単に男気があるだけではなく、周りに担がれて身の丈に合わない社長をやっていることをたみに吐露する実は弱い人間なのだが、高倉はそんな複雑な性格の男を静の演技できっちりと好演。33年振りに観て、高倉は実に上手くて雰囲気のある俳優だなということをいまさらながら再発見。