「天国と地獄」1963年日 評価4.6
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、仲代達也、三橋達也、山崎努、香川京子他
1993年、2025年4月観賞
大手の靴製造メーカーの常務、権藤の一人息子が誘拐された。と思いきや、実は誘拐されたのは権藤の住み込み運転手青木の息子であったが、犯人は権藤に身代金3000万円を要求。権藤はいやいやながらも金を用意し犯人の指示するままに特急列車からかばんに入った金を投げ落とす。
前半の息子取り違えから身代金を用意する下りまでは、靴製造メーカーの権力争いを絡めながら見どころ十分。中盤の、身代金引き渡しから誘拐されていた子供の保護、警察の理路整然とした捜査の進捗も緊迫感がみなぎり、ラストの精神異常をきたしている犯人の描き方も迫真。
確かに少し時代を感じてしまうストーリー内容だし、まずは丘の上の一軒家である権藤家の周りの聞き込みをすればすぐ犯人は割れるのではないか?などちょっと雑なところはあるものの、それを感じさせないスピード感もある。
黒澤作品の中でも1960年代前半の娯楽映画としてピークを極めていた時代の1本で、この3部構成の脚本が見事だし、3部ともそれぞれ、三船敏郎、仲代達也、山崎努という芸達者が中心となり演技面でもこの映画のけん引力となっていて、全体としてとても迫力ある面白さを感じさせる。