「戦場にかける橋」1957年英・米 評価4.1


監督:デヴィッド・リーン
出演:ウィリアム・ホールデン、アレック・ギネス、ジャック・ホーキンス、早川雪洲他

1983年、2025年2月観賞

 第二次世界大戦中の1943年。タイとビルマの国境付近にあるクワイ河に捕虜となったイギリス軍兵士らを投じて橋を建設しようとする日本軍とイギリス兵の確執が描かれる一方、捕虜生活から脱走した米兵を組み入れ、橋の爆破を敢行しようとするイギリス軍工作部隊の作戦が進む。

 日本人の視点から感じられるのは、第二次世界大戦時の日本式と欧米式の指揮命令系統などの組織的統制の考え方の違い。これを浮き彫りにしながら兵士としての尊厳や名誉を謳いあげていて、40年以上前、当時中学生だった私にはそれがとても印象に残っている。

 一方、去年2024年に読んだピエール・ブールの原作及び原作に忠実な本作では、せっかく捕虜たちが建築した橋を破壊せざるを得なかったイギリス兵側からの視点にも対等に時間が割かれ、戦争の虚無感が強く表現されていると感じる。出演者のクレジットの筆頭がウィリアム・ホールデンであることからわかる通り、特に半分を過ぎたあたりから橋爆破工作が話の軸になる。その結果として、2つそれぞれに単体となりうるほど丁寧に描いているため、作品全体としての終着点がいまいち曖昧になってしまってはいる。

 今回は4Kリマスターで観たが、この後「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバコ」を世に送り出すリーン作品だけあって、これが70年近く前に撮影されたものか?というような圧倒される映像と本格的なゲリラ行脚には目を見張るものがある。同時に、各登場人物像などは時間の許される限り十分に深掘りされ、日本兵の言語は徹底して日本語など、細部にわたり神経の行き届いた演出で、単純な戦争ものではない作品に仕上げているところは素晴らしい。