「蜘蛛巣城」 57年日  評価4(5点満点) メジャー度2

監督:黒澤明
出演:三船敏郎、山田五十鈴、千秋実他

 シェイクスピアの「マクベス」の舞台を日本の戦国時代にうつした作品。幼馴染で親友である武将武時と義明はある日、領内の森の中で森のもののけと思われる不思議な老人から未来を予言される。その内容は武時は現在の国の次の城主になり、その後義明の息子が城主になるというものだった。その話を聞いた武時の妻は夫をそそのかし、武時は城主を殺し、自ら城主となる。しかしそのあとの予言も気になる妻は、夫に義明とその息子を殺させる。良心の呵責に耐えかねた武時は酒の場で半狂乱に。また、逃げのびた元城主の息子と義明の息子の軍勢が攻めてきたときの言動により、武時の部下は武時が今までの内乱の張本人だったことを知る。武時は自らの部下の矢に射抜かれ死ぬのだった。

 この時代の日本映画はセリフが聞き取りづらいという欠点はあるものの、後半のストーリーの畳み掛け方はさすがに黒澤が脂の乗り切った時期の映画である。よく知られたストーリーだけに先の話は見えてしまうが、緊迫感のある演出(能楽の様式を持ち込んだといわれる)により興味を失わせることなく一気に見せてしまう。さすがというよりない。映像の美しさ、娯楽映画としての興奮を堪能できる名作だ。