「小早川家の秋」1961年日 評価3.5


監督:小津安二郎
出演:原節子、司葉子、中村鴈治郎、新珠三千代、小林桂樹、加東大介他

2024年9月観賞

 京都の老舗の酒屋、小早川家の当主・万兵衛と、彼の長男の未亡人・秋子及び次女の紀子の縁談、小早川家を継いでいる長女夫婦を中心に、万兵衛のかつての愛人とその娘などを絡ませ、万兵衛の唐突な死までを描いたコメディ色の強い作品。

 小津唯一の東宝作品だが小津らしい映画であり、様々な画角の取り方など芸術性は極めて高いし、いつもの小津ファミリーに加え、東宝のスターたちを見事に演出している点も作品の質を高めているとは思うが、「秋日和」で母娘を演じた原節子と司葉子が義姉妹の関係、「お早う」のおなら兄弟の弟の出演、原節子の住む団地の一室は「お早う」「秋日和」の一室と同じなど、この、1年ごとに製作された3作を最近続けて観たため、突っ込みどころとは違うと思いつつ、やはりこのマンネリズムは気にはなってしまう。

 前作「秋日和」同様、女は見合いで結婚するものという大前提での話はやはり現代では違和感を覚える。また、個々、それぞれのシーンは見どころが多いのだが、原節子と司葉子の義姉妹を巡る話と、中村鴈治郎演じる小早川家の当主とその周りの人々の話は深層ではほとんど別ストーリーと言ってもいいほど絡んでこず、作品全体としてあまり一体感は感じられない。

 なお、一応コメディの分類にはなるだろうが、度重なる墓地や複数のカラスの映像が多く挿入され、何か不吉な雰囲気と不思議な後味を残す。