「ガープの世界」1988年米 評価4.5


監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:ロビン・ウィリアムズ、グレン・クローズ、ジョン・リスゴー、メアリー・ベス・ハート他

1988年、2024年9月観賞

 第二次世界大戦時の負傷兵と母親との一夜の性交により生命を授かったガープ。先進的な思考の母の過度な干渉に悩まされながらも、大学でレスリングに勤しみ、恋に落ちて作家を目指し結婚後二人の息子も授かり、順風満帆の人生だったが、その後幾多の試練が訪れる。

 ジョン・アーヴィングの4作目となる原作は、数奇な出来事を通じて、人生とは様々な事が起きるものだがそれを乗り越え、受け止めて前向きに生きようという、どこか御伽噺的でも人生謳歌が主題の、とてもアーヴィング作品らしい内容で、本作はその雰囲気を上手く醸し出すことに成功している。

 まず称賛すべきは製作時にほぼ映画界では無名でありながら、主要な登場人物を演じたロビン・ウィリアムズ、グレン・クローズ、ジョン・リスゴーの3名。その後の彼らの目覚ましい活躍・経歴を思えば意外でも何でもないのだが、このかなり奇抜な人生を、現実味のあるものに感じさせつつも、どこか非現実感も感じさせるという難しい役所を好演(もちろん監督ジョージ・ロイ・ヒルの力量もある)。個人的には細身の整った顔つきで、ガープの妻を演じたメアリー・ベス・ハートも好きなのだが実は彼女はグレン・クローズと同い年で、公開年においては、出演者の中で映画界で最も知られた俳優だったことを今回知って驚いた。

 様々な奇怪なエピソードが積み重なるストーリーは「ホテル・ニューハンプシャー」と同じなのだが、中心となる登場人物の数が少ないことと上映時間が30分弱長いこともあり「ホテル~」のような表面的にストーリーを追うという印象は受けない。それぞれの行動原理や心情の起伏の表現も丁寧で、何があっても人生を前向きに楽しんでいこうというメッセージがしみじみと心に響き、ラストはハッピーではないのだが、最悪の事態になっても残された家族はそれを乗り越え、前向きに生きていくだろうことを確信できるのは、ガープを取り巻く家族の心情の醸成が丁寧に描かれているからだと思う。

 個人的にはこれまで観たアーヴィングを原作とした映画化3作品(上述+「サイダーハウス~」)の中で最良のもの。