「フィールド・オブ・ドリームス」1989年米 評価5


監督:フィル・アルデン・ロビンソン
出演:ケビン・コスナー、エイミー・マディガン、レイ・リオッタ、ジェームズ・アール・ジョーンズ、バート・ランカスター他

1990年、1992年、2024年8月観賞

 アイオワ州で農業を営むキンセラは、トウモロコシ畑で「それを作れば、彼はやってくる」という謎の言葉を聞くとともに、野球場の幻影を見る。彼はトウモロコシ畑を潰して野球場を作ると、ある夜、そこに1919年に無実の罪で球界を永久追放され、失意のうちに生涯を終えたはずの“シューレス”・ジョー・ジャクソンがいた。

 小学生~中学生の時に最も好きだったスポーツは野球で、多勢に同じく、王、長島、末次、土井、柴田、柳田、張本などなど数多のスター、個性派がいた黄金時代の巨人ファンだった。もちろんその頃、友達と遊ぶ時も基本、野球がベース。そんな野球ファンだった人間の心を揺すぶらずにいられない名作である。

 私は元々ジャンルとしては硬派なドラマ系映画が一番好きなのだが、その評価基準に囚われない、理屈抜きにえこひいきしてしまう映画というのがあり、その範疇に入ってくるのが本作。

 まず、冒頭から謎のメッセージが出てきて話のテンポが良く、そのメッセージや登場人物に関する謎解きが、話の展開の中でクリアになって行き、最後にはすべてがぴったり収まるところに収まって、映画の構成としても見事。

 俳優陣も良い。主人公の大根役者(失礼!)のコスナーの雰囲気も本作では作風にぴったりマッチしているし、レイ・リオッタはグレー系の瞳が印象的で、かつ、演出的にもミステリアスな存在として一貫しており、過去から蘇ったシューレス・ジョーの浮世離れした存在感がとても良い。奥さん役のエイミー・マディガンの気風の良さ、娘役のギャビー・ホフマンは過度にならない感じで可愛らしく、バート・ランカスターの出演場面もほっこり暖かいし、それぞれが超一流とは言えないとしても、この配役が偶然の中で名作へのベクトルを後押ししているような気がしてならない。

 本作は完全にファンタジー映画に分類されるのだろうが、描き出される本筋は、これまでの人生の中で自らの意思で素通りしてしまった人生の転機への後悔、家族愛、希望を持って行動することの大切さである。

 もうね、ラストの親子のキャッチボールシーンまでのシークエンスは涙が止まりませんよ。思えば、父や兄ともよくキャッチボールをしたなぁ。息子とも以前はやっていたが、もうしばらくやってないなぁ。

 因みに今回鑑賞後初めて知ったのが、バート・ランカスター演じた、町医者として生涯を終えた、メジャーでたった1イニング守備についただけのムーンライト・グラハムが実在の人物だった点。このエピソードを本当にうまく使っている。