「レインマン」1988年米 評価4
監督:バリー・レヴィンソン
出演:ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ、ヴァレリア・ゴリノ他
1989年、2024年8月観賞
海外スポーツカーの輸入業で金儲けを企んだチャーリーだったがそうは上手くいかないところ、父の訃報が飛び込む。葬儀に出ると300万ドルの遺産はこれまでに存在すら知らなかった自閉症と重いサヴァン症を患う兄が相続すると知り、17歳年上の兄がいる療養施設を訪ねる。
アカデミー作品、監督、脚本、主演男優賞4部門を受賞。特に、重い精神疾患を患う兄を演じたダスティン・ホフマンの演技が素晴らしい。また、序盤は身勝手でずるがしこい嫌な男を演じたトム・クルーズ(もちろん滅茶苦茶カッコいい)もなかなか達者なところを見せているし、彼は次作で汚れ役ともいえる「7月4日に生まれて」を選んでいることからも、単なるアイドル俳優からの脱却を図ったターニングポイントに位置する作品でもある。
一人身勝手に生きてきた男が、存在を知らなかった兄がいることを知り、初めはその精神疾患に苛立つが、彼のこれまでに隠遁を強いられてきた人生、弟のことを忘れずにいたことを知るにつれ、実の兄として愛し始める過程が丁寧に描かれ、確かに作られもののストーリー展開という趣は強いものの後味が爽やかな良作。現代の観点では、ドキュメンタリーでなければ精神疾患者を実写で動かすことは皆無で扱いづらい題材になってしまったが、今や万人が観たいものを観たい媒体で観る世の中で、本作のような内容が患者たちへの偏見を少しでも減らすことにつながるのではないかと思う。本作はセンシティヴな内容を扱っていながら、かなりエンタテイメント性も加味しているため観やすい反面、今観ると必要以上にライトな印象は受ける。
ちなみに似ても似つかない感がするが、上背がなく、極めて高くて骨太の鼻筋をもつホフマンとクルーズは、意外に兄弟という設定に違和感はない。