「お早う」1959年日 評価3.7


監督:小津安二郎
出演:佐田啓二 、久我美子 、笠智衆、三宅邦子、設楽幸嗣、島津雅彦、杉村春子他

1990年、2024年8月観賞

 1950年代後半の東京都郊外の新興住宅街に住む、中学生の息子を持つ中年家族たちの日常生活をコメディタッチで描いた、小津作品としてはかなりライトな一品。

 幼い子供がいる中での定年後の生活への不安、思春期の子供たちに対する苦労、近所づきあい、老齢の親との関係、アルバイトで生計を立てる若い男の臆病な恋愛観など、描かれる内容自体は現代にも通じるものではあるが、特にそれぞれが深掘りされたり解決の道筋が示されるわけではないため、製作当時の市井の生活感をコメディを多分に塗して描いたという内容。

 毎度のことながら小津ファミリー総出演とでもいうような俳優陣は安定の演技。それに加え、物語の中心となる中学生と小学生の兄弟の出す味が良い。ちなみに笠智衆と三宅邦子が夫婦を演じており、10年前の「晩春」で笠智衆が娘に結婚すると鎌をかけたお相手と結婚してるんかぃ!とどうしても突っ込みたくなる。

 本作で描かれる時代は私の生前なのだがなんとなく空気感はわかるし、かなり笑えるところもあるが、今の基準でいうと、女は家事をしっかりこなすことがベースとなっている生活模様とか、男尊女卑的なちょっと問題になりそうなセリフも多いところとかが今の若年層に受け入れられるかは甚だ疑問。本作のような内容は、どうしても時代と共に古さを感じてしまうことは致し方なく、50代以上の方にしかお勧めはできないかな、とは思う。

 ただ、無駄とも思われる何気ない会話は、やはりコミュニケーションのきっかけとして大事ということはいつの時代でも変わらないのだろう。