「山椒大夫」1954年日 評価2.7
監督:溝口健二
出演:花柳喜章、香川京子、田中絹代、進藤英太郎他
1989年、2024年3月観賞
平安時代末期、父親が左遷されたために母親と国元に帰る途中の厨子王と安寿の兄妹は、道中、人さらいに襲われ母親と離別。二人は荘園の奴隷としてきつい労働に当てさせられる。10年の時が流れたある日、佐渡からさらわれてきた若い娘の厨子王と安寿の唄を聞き、母親が佐渡に流され、まだ生きていることを知る。
中世の民衆芸能を原話として森鴎外が執筆した原作を映画化。そのような出典であるがため、正直、ストーリーは凄くおおざっぱで単純でご都合主義的なところも多い。また、私の苦手な中世以前(平安時代)を舞台にしていることもあって、内容的には何ら取り立てるものはない。
それと、田中絹代と香川京子(顔の造形と当時としてはかなりの高身長(162cm)であることから長澤まさみとよく似ている)の熱演は素晴らしいのだが、厨子王を演じた花柳喜章が、香川京子より背が低くて顔が大きく、大変申し訳ないが「とっちゃんぼうや」的な佇まいであるため、父親の敵を討つという役柄の割に映画的見栄えが非常に悪く、役者的な魅力はこの映画からは感じられない。
一方で、移動クレーンを多用した「画」は、どの場面を切り取っても芸術作品として超一級品であり、様々な場面で感嘆してしまう。しかし、私の映画評価基準において芸術性は、ベースがあっての加点要素でしかないので、世間一般に評価が高い本作も、ベースでの評価は低く、芸術性だけで総合点が高くなることはない。「祇園囃子」「近松物語」と3作溝口作品を観ているが、どれも評点は3点未満。どうも私には合わないらしい。