「リバー・ランズ・スルー・イット」1992年米 評価4.2


監督:ロバート・レッドフォード
出演:クレイグ・シェイファー、ブラッド・ピット、トム・スケリット他

2024年2月観賞

 1910 - 1920年代のモンタナ州で、スコットランド出身で厳格な牧師である父マクリーンの元、息子兄弟ノーマンとポールはフライ・フィッシングを趣味として育つ。ノーマンはやがてマサチューセッツ州の大学に進学して街を離れ、ポールはモンタナ州で新聞記者をしつつ、ポーカー賭博にのめり込んでいく。

 物語は徹底して長男ノーマン視点で描かれていて、だからこそ、厳格だった父や奔放な弟の私生活に入り込みすぎることはなく、大きな舞台は少年・青年期を送った大自然であり、その多感な時期の懐かしき想い出をフライ・フィッシングを通じてゆったりと表現できたのだと思う。また、父も弟も表面的な印象で語られる部分が多く、実際の影の部分(特に弟の)は映画としては隠され通されていることで、ほどよい緊迫感が持続することにもなっている。

 とにかく、次男を演じたブラッド・ピットが眩しいほどに魅惑的で、それが本作の最大の魅力だと思う。ブラピは当時30歳手前。注目され始めるには遅いと言える年齢で、その経歴や外見も監督であるレッドフォードによく似ていて、レッドフォードの思い入れもあった(9年後にはレッドフォード主演、その部下にブラピの映画「スパイ・ゲーム」が製作された)からこそ、奇跡に近いような映像が残されたのだろう。

 語り口とか映像的に特異な点はないし、人物像の描き方も極めて普遍的なので、観る人の過去経験により評価の差異が出るという類の映画。個人的には時折挟まれる大空の映像が印象深く、昔、実家の横の草むらに寝転んで大空をずっと見上げていたことを思い出した。本当に空は無限で、それが宇宙につながっている思うと神秘的で、引き込まれてしまうという恐ろしさも少し感じていたなぁ。