「椿三十郎」1962年日 評価4.1
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、仲代達矢、加山雄三、小林桂樹、志村喬、藤原釜足、田中邦衛他
1989年、2024年1月観賞
先だって、荒れた宿場町のやくざものの抗争を共倒れに導いた三十郎は、今度は城内の汚職事件に揺れる街にやってきた。そこで三十郎は今度は椿三十郎と名乗り、正義感溢れる9人の若侍に加担することになる。
話の骨格は「用心棒」と同様、「二つの組織の対立する地域によそ者が現れ、その混乱を鎮める」というものだが、本作は常に若侍側に味方することになるので、主人公がどちらにつくのかわからない風来坊然としていた「用心棒」に比べると緊迫感が少ない。また、本作では明らかにコメディリリーフ的に登場する役柄(家老の妻子、相手方の囚われ侍)がいて、彼らの登場により、スピード感が途切れるし、ストーリー上の破綻(家老が囚われている家の隣家で大声で妻子が話しているなど)も散見される。
三船の堂に入った浪人振りと、前作同様悪役筆頭を演じる仲代の二人の存在感は際立っており、娯楽映画としての水準は高いのだが、この二人に見どころが偏り過ぎているところや、舞台が屋内が多いことから「用心棒」のような画角上のダイナミックさを感じられないなどもあって、個人的嗜好では前作には及ばないと評価。