「それから」1985年日 評価3


監督:森田芳光
出演:松田優作、藤谷美和子、小林薫、笠智衆、草笛光子他

1988年、2023年11月観賞

 実業界で財を成した父の財産で悠々自適の暮らしを送っている代助。ある日昔の友人であり、心を寄せていた親友の妹である三千代を娶せて結婚させた平岡が訪ねてくる。彼は勤めていた関西の銀行の横領事件の責任を取る形で辞職し、子を亡くしてからすっかり体が弱くなった三千代と共に東京に帰ってきていた。

 1910年に刊行された、夏目漱石の前期三部作の二作目にあたる作品の映画化。若くして異才の映画監督と名高かった森田芳光が監督。

 そもそも明治時代のいわゆる高等遊民の生き方というのが私のあるべき人生観と相いれないため、高等遊民が主人公の小説は、どんなに文学上素晴らしく、美しい表現に満たされていたとしても、心動かされることはない。本作初見時はそのような感情が植え付けられる前に観たものだから、森田監督が、「如何に綺麗に撮るかに腐心した」と言った(その後プッツン女優として名を馳せることになる)藤谷美和子の映像と演出が慎ましく、際立って魅力的で、かなり高評価をつけている。「寂しくって仕方がないから、また遊びに来て頂戴」というセリフも心に残っている。
 一方で、やはり齢を重ねてきて、どうしたって話の本筋には魅かれないので、松田優作の演技派としての一面も、森田監督の異才ぶりも感じることはできるのだが、平凡な評価になってしまう。