「夫婦善哉」 55年日  評価4(5点満点) メジャー度2

監督:豊田四郎
出演:森繁久彌,淡島千景,司葉子他

 大阪の化粧問屋の息子・柳吉は,女房と娘を捨てて芸者の蝶子と駆け落ちするが、そのことで実家から勘当されてしまう。しかし柳吉はいつかは実家に許され後継ぎとなるだろうと考えつづけ,ろくに仕事もせず,蝶子の臨時雇いの芸者で稼いだ貯金で遊んでいるばかり。一方蝶子は自分が柳吉を駄目にしたと思われたくないために一生懸命働き,いつかは二人で店を出すことを夢見ている。ある時,蝶子は化粧問屋の使いに,柳吉と別れれば手切れ金を渡すと言われるが,それを突っぱね,柳吉は完全に勘当されてしまう。

 話の内容的には自堕落な男に,しっかり者の女が惚れ抜くという「浮雲」に似た内容だが,こちらは喜劇調の作品である。話の展開に特に変哲はないが,柳吉役の森繁と蝶子役の淡島の演技が素晴らしい。いかにも放蕩に育てられたぼんぼんを森繁は軽妙に演じ,しっかりもので甘えん坊で、自堕落な柳吉に惚れたこと以外欠点らしい欠点もない母親として,女として理想の姿を淡島は可愛く,美しく演じた。二人が30を過ぎて子供のようにじゃれあう姿など、見ているこちらが恥ずかしいというか,ほほえましいというか…

 登場人物が実に個性的で楽しい。特に子汚い小さな天ぷら屋をやっている蝶子の両親がとても良い味を出している。役者達の生き生きとした演技が見ているだけで楽しい。