「未来への飛行」1964年米 評価4.2
監督:シドニー・ルメット
出演:ヘンリー・フォンダ、ダニエル・オハーリー、ウォルター・マッソー他
2023年10月観賞
米ソ冷戦時代。カナダ国境に未確認飛行物体が米軍国防司令部のレーダーに捉えられ、米軍の対ソ爆撃機編隊はソ連領最前線の待機ポイントに向かう。ほどなく飛行物体は民間航空機と判明したが、爆撃機編隊は軍事コンピュータの誤作動によるモスクワを核攻撃せよとの暗号指令を受信し、ソ連に向かう。この動きを察知したアメリカ政府は音声通信で攻撃中止を連絡しようとするが、ソ連側の電波妨害によって通信は途絶し連絡不能となっていた。
ストーリー展開は同年、同社製作の「博士の異常な愛情」とほとんど同じであり、訴訟戦術により「博士~」が8カ月先に公開することになったこともあり、本作は「博士~」と比較し興行的に失敗しているが、評論家筋の評価は高い。
「博士~」が風刺コメディの内容であったのに対し、シドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ主演で分かる通り、本作は非常にシリアスな内容。現在の軍事技術からすれば、60年前の本作のような単純ミスはあり得ないと考えられるが、そこは時代の流れとして許容しつつ鑑賞。
「博士~」は軍部のバカバカしい偏執狂的考えからの軍部の暴走に主眼が置かれているが、本作では、いかに地球上での全面核戦争を避けるかというアメリカ側の苦悩に焦点が置かれている。
フォンダの硬質な演技がアメリカ大統領という重さを十分に感じさせ、ウォルター・マッソー演じる憎々し気なタカ派の教授が良いスパイスとして作用し、衝撃的なラストは「博士~」に比肩するほどであり、決して「博士~」に劣る作品ではないと思う。