「セルピコ」1973年米・伊 評価4.4
監督:シドニー・ルメット
出演:アル・パチーノ、ビフ・マクガイア、バーバラ・エダ・ヤング他
1988年、2023年10月観賞
ニューヨーク市警に配属になったセルピコは、賭博などの摘発に恩義をかける代わりに犯罪者から賄賂を受け取ることが日常となっている警察の実態に抗い、自身は賄賂を受け取らず、腐敗した組織を何とかするために上司や市に働きかけるが、遅々として捜査は進まない。ついにセルピコはその実態をニューヨークタイムズ誌に寄稿するが。。。
1970年に警察の腐敗をニューヨークタイムズ紙上に暴露し、翌年、同僚刑事の意図的な怠慢で重傷を負った、実在の麻薬課刑事セルピコの半生を描く。実際に大スキャンダルとなった実話をもとにしているが、警察という巨大組織の腐敗を暴露するというミステリーではなく、セルピコという人物像を中心に描いた作品。
ルメット&パチーノのコンビには同時期に「狼たちの午後」があるが、それと同様、ルメットはパチーノの魅力を最大限引き出している。自分の信じる行動に信念を滲ませる人物を演じるのはパチーノの真骨頂でもあり、そんな、仲間外れにされる境遇でも決して挫けない人物像は、間違いは間違いと発信して強く生きることへの憧れも感じさせるほど。
パチーノの他に、映画でよく見かける(または印象に残る)俳優はほとんど使っておらず(ヒロイン役の女優が二人いるが地味で目立たない)、演出家上がりのルメットらしく、実力派で周りを固めており、それにより人物像を浮き彫りにするという主旨を貫徹しているし、パチーノの存在が際立つ。まさに本作のパチーノの美貌は「ワォ!」(by ダイアン・キートン)というほどだし、上述の演技上の魅力も最上級。ヒッピー風な服を着こなす姿も新鮮だ。