「狼たちの午後」1975年米 評価4.4


監督:シドニー・ルメット
出演:アル・パチーノ、ジョン・カザール、チャールズ・ダーニング、クリス・サランドン他

1988年、2023年8月観賞

 ニューヨーク市ブルックリンの小さな銀行に3人の男が強盗目的に押し入る。しかし一人はすぐに嫌気がさして地下鉄で逃走。また、銀行の金は他に移された後で1000ドル程度しか残っていない。そうこうするうちに銀行は警察官に囲まれ、残った強奪犯のソニーとサルはただ無事に脱出することだけを考える。

 公開の3年前に実際に起こった事件を題材に、社会派の名匠シドニー・ルメットが監督、「ゴッド・ファーザーⅡ」などで当時ノリにノっていたアル・パチーノ主演、ジョン・カザール共演となれば面白くないわけはない作品。

 初っ端から仲間の一人が脱落し、銀行に金が残ってないということから如何に杜撰な計画だったのかをシリアスな舞台でコメディっぽく描いているところから映画に惹き込まれる。そして、銀行内の人質との会話や、警官とのやり取りを通じ主犯の二人がどのような人物なのかを徐々に詳らかにしていくという進行も見事。密室劇に近い地味な舞台設定でありながら、ベトナム帰還兵、ゲイ、囚人暴動といった社会的問題点も描かれ、ほとんどダレることがない。

 エルトン・ジョンの「過ぎし日のアモリーナ」から始まるなんて記憶になかった。渋い選曲。また、主役二人の他に、チャールズ・ダーニング、ジェームズ・ブロデリック、ランス・ヘンリクセンといったよく見かける俳優が多いのも見どころの一つ。