「ライムライト」1952年米 評価4.1
監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン、クレア・ブルーム、シドニー・チャップリン他
1988年、2023年7月観賞
カバレロはかつての有名な舞台道化師。しかし今や酒の力を借りなければ舞台に上がれないほど落ちぶれていた。ある日、酔って家に帰ってくると階下に住む若い女性がガス自殺未遂で倒れているのを発見。彼女を自分の家に連れ帰り看病を始める。
老道化師カバレロが精神が原因で脚が動かなくなったバレエダンサー、ケリーを力づける数々の名言が、この映画の白眉。また、親子以上に歳の違うカバレロを愛するケリーの気持ちもとてもよくわかり、今でいえば親子程度の歳の差のカバレロがツンデレ対応をするのに少々違和感があるのだが、感動的なストーリーの良い映画であることは確か。
ただ、客観的な評価をすると、35年前に感じたような評価(5)をつけることは憚られるというのが正直なところ。その理由は、当時のチャップリンのアメリカにおける立ち位置(政治的活動に対する批判的意見が相次いでいた)を背景とした、言いたいセリフが先走っている点が第一に考えられる。学生の頃には、その違和感よりも言葉自身の持つ力に感銘を受けたものが、歳を重ねた今では、映画の中のセリフとしてはどうしても浮いているように感じられる。
また、正直なところ、途中で挟まれるカバレロの舞台シーンがいまいち面白くない。ノミの大道芸シーンしかり、歌のシーン(これは英語が良くわからないという理由も大きいかもしれない)しかり。また、せっかくのバスター・キートンとの共演シーンも特に笑えるところはないいどころか、キートンの延々と楽譜を落とすシーンにはうんざりするくらい。合計20分ぐらいのカバレロの舞台シーンが物語の流れを分断していることもマイナス要因。
本格派のクレア・ブルームは美しく十分魅力的だし、チャップリンの息子シドニーもなかなかのイケメン。あざといとは感じながらもチャップリンがケリーを元気づけるセリフもやはり名言であることは間違いないのだが、やはりこれは観た時の年齢により受け取りが変わるものだと痛感する。
因みに、ケリーの「歩けたわ」と連呼するシーン。これはチャップリンに影響を受けたと公言しているキューブリックが「博士の異常な愛情」でパロディ化していて、不謹慎ながらここが一番面白かった。