「君たちはどう生きるか」2023年日 評価3.5


監督:宮崎駿
出演:アニメ

2023年7月観賞

 太平洋戦争中の火災で母親を失った小学生の眞人は、父親に連れられ、父親が再婚することになる母の妹の住む郊外に疎開し、謎の多い大邸宅に住むことになる。ある日敷地内に住むアオサギが眞人に襲いかかってくる。

 物語導入部は、戦時中を舞台にしていることもあり「風立ちぬ」風の、現実に軸足を置いた作品かと思ったが、途中から、眞人の冒険・成長物語の様相を呈してくる。私は宮崎駿作品以外のジブリ作品はほとんど観ないので比較できないが、そこで描かれるシークエンスにおける御歳80を超えたとは思えないあふれ出るイマジネーションが凄まじい。

 人間の起源から人間世界に均衡をもたらす別世界をもう一つの世界(「下の世界」)として描いており、宮崎駿阪「2001年宇宙の旅」ともいうような内容なのか、と途中思ったが、結果としてはそこまで拡散はしていない。

 ただ、非常に大きな世界観を描くのかと思いきや、「下の世界」での登場人物が主人公眞人の周辺にいる人たちだけで、しかももう一つの世界は崩壊してしまうのにその影響は現実世界になにも影響しないようで、大ぶろしきを広げた世界観の上で、小さい話で収束してしまうのでなんとなくバランスが悪い。

 また、観終わってから感じてしまうのが、結局父親は妻存命中に、妻の妹ナツコと浮気し、子供まで作っているという非常識なことをやっているのに、当のナツコは悪びれる風もなく、ヒサコの子供時代のヒミも屈託のない少女として描かれているのも、なんとなく綺麗にまとめすぎた感を受けざるを得ない。

 と、かなりバランスの悪さを感じてしまう作品なのだが、ストーリーの軸はしっかりしているし、相変わらずの魅力的な世界観ではあり、とりあえず、宮崎駿“健在”ではあると思う。

 毎度感心するのはキャラクター作りの上手さ。今回は鳥類がたくさん出てくるがコミカルでもあり、“わらわら”は可愛いし、グッズを売り出せばバカ売れするだろうと思う。因みに、声優に有名俳優を多く使っているが、私の感想としてはいまいちしっくりしない。

 なお、「ハウル」以降、わかりづらいという評が増えていく宮崎駿作品だが、結構親切に劇中のセリフで明確に語ってくれるので、ちゃんと集中して観ていれば訳が分からないということにはならない。本作も、ナツコがヒサコの妹であること、ヒミがヒサコであることは結構早い段階で分かる。