「雨に唄えば」1952年米 評価4.1
監督:ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン
出演:ジーン・ケリー、ドナルド・オコナー、デビー・レイノルズ他
1987年、2023年7月観賞
無声映画の大スター、ドンは、ペアを組んで大ヒットを連発していたリナとは製作会社の戦略で表向きは恋仲という関係を保っていたが実際は特別な好意を持ってはいない。時代は無声からトーキーへと変わりつつある中、ドンは偶然車に乗せてもらった俳優の卵であるキャシーにその演技力を酷評され、憤慨しつつも将来に不安を感じるようになる。
ジーン・ケリーは肩幅が広くて腕が長く、小柄ではあるがダンスはとてもダイナミック。現代のダンサーと比べればそりゃスピードやキレでは負けるのだろうが、優雅さや気品というものが滲み出ていながらも細部にわたって神経が行き渡り、醸し出すオーラが半端なくて、もうマイケル・ジャクソン級。また、共演のドナルド・オコナーのダンスもケリーに負けず劣らずキレがあるし、コミカルなパートを一手に引き受けていて重要なキャラ。デビー・レイノルズ(キャリー・フィッシャーの母)もチャーミングで、たった3ヶ月の訓練の成果としてはダンスも巧みで、この主演3人の魅力が本作を名作に押し上げている大きな要因になっていることは間違いない。
ストーリーは王道で変哲はないが魅力的だし、それぞれのミュージカルシーンは必然の中にあってストーリーを邪魔しないだけではなく、時にコミカルに、時に情緒的に完成度高く挿入され、ミュージカル映画の傑作と評されていることも納得。特に「雨に唄えば」のシーンの素晴らしさは鳥肌もの。完璧主義者のジーン・ケリーが共同監督だけあって、自作品に極度の完成度の高さを求める点もマイケルに似ているところかもしれない。
ただ唯一、後半に延々と続くダンスシーンが、ドナルド・オコナーは出てこないし、といってジーン・ケリーのダンスは少ないので、冗長な感じでダレてしまうところがマイナス点。