「パピヨン」1973年米・仏 評価3.7
監督:フランクリン・J・シャフナー
出演:スティーブ・マックイーン、ダスティン・ホフマン、ロバート・デマン他
1988年、2023年7月観賞
胸に蝶の刺青があることからパピヨンと呼ばれている男は、自身は冤罪を主張している殺人罪で終身刑の判決を受け、南米にあるフランス領ギアナで強制労働を課せられる。しかしパピヨンは不屈の精神力で何度も脱獄を企てる。
「どれだけ誘惑に勝てるかでその人間の価値が決まる」この言葉には初見時にとても感銘を受け、その後の生き方に少なからぬ影響を受けた名セリフである。一方で、2回目の鑑賞となる今回、ストーリーはほとんど憶えていないという事実にも直面。
本作は実在するアンリ・シャリエールの自伝的小説を原作としているのだが、シャリエール自身は本作で描かれる2回だけではなく何度も脱獄を行っていて、その複数回及仲間のエピソードのいいとこどりをして映画的演出を行ったのが本作。そのため、特に後半の現地人の住む海岸でのひと時の楽園気分からの展開が、それまでが非常に緊迫感があったところからの落差が激しいとともになんか納得感がなくて、ラストの孤島からの脱出までの間がだれてしまっているのがもったいない。
とにかく本作はマックイーンとホフマンの演技が一番の評価ポイントになろう。演技派としてのマックイーンを堪能できる内容で、独房に何度も入れられ、そのたびに人格が壊されていく様、ラストの、お互いに正常な精神ではなくなった旧友の二人のやり取りなど、この名優二人の演技の凄まじさよ。映画全体としての出来は決して良いとは言えないと思うが、この名演は語り継ぐ価値が十二分にあるという作品。