「ベンハー」 59年米  評価4(5点満点) メジャー度5

監督:ウィリアム・ワイラー
出演:チャールトン・ヘストン、ジャック・ホーキンス他

 キリスト誕生の頃,世界はローマ帝国の支配下にあった。エルサレムの裕福な家の息子ベンハーとエルサレムに着任した指揮官メッサラは幼馴染だったが,メッサラの出世願望と,ひょんな事件による冤罪で,ベンハーは奴隷としてローマ軍の船のオール漕ぎに送られ,彼の母親と妹は牢獄に入れられてしまう。復讐の鬼と化したベンハーは数奇な運命をたどった後,ついに復讐を遂げる。この復讐の最後の過程に,キリストの説教や処刑を絡め,宗教的な感動で締めくくる。

 アカデミー賞で11部門独占という快挙を成し遂げた堂々とした大作だ。当時としては最高のSFXを駆使した映像も違和感がない。また、CGではとてもあらわせない膨大な数のエキストラによる群集や巨大なセットによる威圧感など、映画としての醍醐味にあふれ,3時間40分という時間の長さを感じない。同時に,それだけの長さの映画であるがため,それぞれの登場人物の描き方も丁寧だ。ヘストン以外にあまり有名な俳優を使わなかったのもプラスに働いている。

 と,どこといって欠点もなく,映画として楽しめるのだが,なんと言ってもキリストの死にまつわる伝説を最後に絡めてくるので,東洋人であり,キリスト教徒でもない私にはちょっとしらけ気味である。復讐の無意味さに打ちひしがれるベンハーの心を癒し,病気のベンハーの母と妹をあっけなく治すのがキリストの死であるという結末が,どうも解せない。

 「スター・ウォーズ エピソード1」のアナキンのレースシーンがこの「ベンハー」の二輪戦車競技場面の模倣と言われていたが、そのとおり。まったく一緒である。