「ディア・ハンター」1978年米 評価3.8
監督:マイケル・チミノ
出演:ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、メリル・ストリープ他
1984、1987、1988年、2022年10月観賞
ペンシルバニア州の製鉄所に働くロシア系移民のマイケル、ニック、スティーヴンは徴兵でベトナム戦争に赴くことになる。ベトナム戦争中に偶然一緒に捕虜になった3人は、そこで行われる捕虜同士のロシアンルーレットの強要により精神的に追い込まれるが、マイケルの機転により何とか脱出することに成功する。
学生時代、わずか4年の間に3回鑑賞したほど、衝撃を受けた作品。ロシアンルーレットの戦慄、日常も精神も簡単に破壊する戦争の無常さなどが、美しいギターの旋律とともに記憶に深く残っていた。
約34年ぶりに鑑賞して思うのは、3時間超という時間が長く感じることと、登場人物の性格描写に一貫性がないこと。かなり耐性と許容性のある私でも尺が長く感じるのは、特に全体の半分を占める故郷の結婚式や鹿狩りのシーンが決して無駄ではないとは思うものの、それがその長さに対して後半に生かし切れていないためだと思われる。前半の披露パーティ関連で描かれる田舎の職場仲間の連帯感、友情といったものの変化が、後半における登場人物の人間模様に上手く反映されていない。
後者は、特にマイケルの全体を通じた人物像が揺らぎっぱなし。ベトナムで仲間を救うまでのリーダーシップ溢れるマイケルの描写は良いが、ベトナムから戻ってからのマイケルのキャラがはっきりしない。サイゴンでニックを見かけた後にとことん探索しなかったのか、それをしないで故郷に戻り、ニックの恋人リンダに現を抜かしたのち、再度ニックを探しに大金をもって、しかも自分の命を懸けてという行動への転換が何か拙速に描かれている。同様に、下半身不随になるスティーヴンの心の移ろいや、ジョン・カザール演じるスタンリーの存在意義、メリル・ストリープ、リンダの気持ちの掘り下げもいまいち足りない。結局最も印象に残るのはクリストファー・ウォーケン演じるニックであり、彼だけが納得できる人間性の破壊が描かれる。
と、どうしても今回鑑賞前の評価が極めて高かったために辛口の批評となってしまうが、尺の長さを感じてしまうところはあっても、内容が衝撃的であることは間違いなく、普通にいい映画ではある。