「映画に愛をこめて アメリカの夜」 73年仏・伊  評価3.5(5点満点) メジャー度2

監督・出演:フランソワ・トリュフォー
出演:ジャクリーン・ビセット、バレンチナ・コルテーゼ、ジャン・ピエール・レオ他

 ヌーヴェル・ヴァーグの旗手トリュフォーがまるで自分自身を描いたような劇中劇的な映画。

 フランスでクランクインした映画「パメラを紹介します」では主演4人のうち若い男優は記録係の女との恋愛ごっこにご執心。中年女優はかつての名声にすがり付きアルコール漬けでセリフを覚えられない。主演の人気ハリウッド女優は精神病上がり。唯一まともだった中年男優は事故で突然死んでしまう。その他にも演技の出来ない猫や,フィルムが映像所で焼けてしまったりと災難続きで,どうにも監督の意のままに映画作りが進んでいかない。

 「初めは傑作を作ってやろうと意気込むが,トラブルが続くとどうにか早く作り上げてしまいたいと思うようになる」という監督(トリュフォー)の本音とも取れるセリフの心情が良くわかる。それでも監督が夜な夜な見る夢の中味が、子供の頃に閉館後の映画館から宣伝用スチール写真(それが「市民ケーン」であるところがにくい演出)を盗んだことであったり、記録係の女といちゃつく男優が暇を見つけては映画を見に行き,「自分の楽しみは映画だけだ」というところなど,映画作りの現場は特異な世界(結局一番まともなのは病気を再発させず,常に周りに気を配るハリウッド女優(ビセット)なのである)だが,どうしても映画が好きでしょうがないという関係者達の気持ちを見事に代弁した映画ファンのための、または内輪の映画である。

 理想のハリウッド女優を演じるビセットが美しい。どことなく顔はジュリア・ロバーツを連想させるものの,その美貌はもちろんのこと,女性らしさ,神秘性,気品,知性は,能天気で気品・知性のかけらも感じさせないジュリアとは雲泥の差である(「マグノリアの花たち」のジュリアは良かったけどなぁ)。