「炎のランナー」 1981年英 評価3.2
監督:ヒュー・ハドソン
出演:ベン・クロス、イアン・チャールソン、イアン・ホルム他
1985年、2022年7月観賞
1924年のパリオリンピックにおいて、陸上のイギリス代表として100m金メダリストとなったハロルド・エイブラハムズと、400m走金のエリック・リデル。当時の社会環境をベースに、メダリストとなるまでの過程を描く、1981年アカデミー作品賞受賞。
ユダヤ系イギリス人で、潜在的な人種差別と偏見の感をぬぐえなかったハロルドと、宣教師の道を選びつつ競技との両立に悩むエリックという二人のオリンピックに向けての過程が、作成当時から60年前のイギリスの、格調高さや当時まだ顕在化していた人種による偏見などを交えながら、イギリス映画らしく落ち着いたトーンで丁寧に描かれる。一方で、その二つのストーリーはそれぞれが独立して進行し、結果、同じ国の代表選手となっても二人の人生はほとんど交わらないので、2つのストーリーが孤立している感じで作品としてはなんとなくまとまりが悪い印象を受ける。
大学生として描かれるハロルドはオリンピック出場時25歳で、演じたベン・クロスに違和感がないのだが、当時23歳とハロルドより年下のエリックを演じたイアン・チャールソンは、妹と設定されている女優との対比でもどう見ても30歳以上にしか見えず、違和感が残る。一方で、今なら間違いなくイケメンで固めるであろう出演者が、貴族のアンドリュー卿以外いまいちイケメンでもないのは当時のイギリス映画らしく清いところ。
また、スポーツ映画にありがちなのだが、200m走(位と思う)で転びながらも1位になるところとか、上を向いて泳ぐように走るエリックの走法など、スポーツシーンの描き方はかなり雑(「ロッキー」の試合シーンみたい)で、その点もどうしても気になってしまう。
オープニングとエンディングのみにしか使われていないのだが、それだけで耳について離れないヴァンゲリスの有名なテーマ曲が良い。