「フレンチ・コネクション」 1971年米 評価4.5
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:ジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ他
1986年、2022年7月観賞
ニューヨークの麻薬対策課のドイルは強引な捜査も厭わず、ポパイと呼ばれている組織にとっては扱いにくいベテラン刑事。ある日、コンビを組んでいるルソーとの捜査により、フランス経由で大量の麻薬が持ち込まれる取引が進行している情報をつかむ。
1961年に実際に起こった麻薬密輸事件をベースにした硬派な刑事アクション映画で、アカデミー5部門受賞(作品、監督、主演男優、脚色、編集)。元々アクターズスタジオで本格的に演技を学んでいたジーン・ハックマンは本能で動くドイルの心的背景を理解できずに悩んだそうだが、実際の事件の中心人物であったエドワード・イーガンとサルヴァトーレ・グロッソの二人の刑事と2週間一緒に過ごすことで吹っ切れ、全く我が道を往くという独断的な荒くれ刑事(ラストの誤射の描写が秀逸!)を完全に掌握し、本作ではまさに稀代の性格俳優の誕生を確信させる名演技を魅せる。そんな荒くれ者のドイルを、冷静だが行動に躊躇せずドイルを支える相棒ルソーを演じたロイ・シャイダーも、目立たないながらも名演(助演男優賞ノミネート)。このバディが映画史上最高と言っても良いくらい嵌っていて、改めて本作の魅力を再認識。
私はアクションものでも、生身の人間の通常を少し超える範囲の働きでないと全くストーリーに懐疑性を感じてしまう。なので、どうせ主人公は非現実的な超人的活躍をして、絶対死なないでしょ、という展開が見え見えの1990年代以降くらいのよくある刑事アクションものには魅かれない。しかし本作で見せるカー・アクションは現実的な範囲を超えないためにかえって緊迫感は半端ない(ハックマン自身が運転しているシーンも多い)し、ほとんど突撃的に行った様々な撮影により、尾行や張り込みのシーンを始め、全編すさまじい緊張感を維持し、本作が刑事ドラマの歴史を変えたといわれることにも大いに納得の名作。