「エデンの東」 1955年米 評価4.6
監督:エリア・カザン
出演:ジェームズ・ディーン、ジュリー・ハリス、レイモンド・マッセイ、ジョー・ヴァン・フリート他
1984年、1988年、2022年5月観賞
1917年カリフォルニア州。農家として真面目に生きてきたアダム息子の双子の兄弟ケイレブ(キャル)とアーロン。アーロンは真面目な優等生タイプで父のお気に入り。一方でキャルはナイーブでひねくれもののため、父の愛情を受けたいと思いながらもやることが上手くいかない。ある日、キャルは死んだとされていた母親の居場所を突き止める。
私にとって肉体上の精神的影響を最も受けたのはブルース・リーだが、芸術上の影響はジェームズ・ディーン。学生時代から愛読しているのは「ジェームズ・ディーン ある友情の証言」という、ジミーと長く同居し親友と言える仲であったウィリアム・バーストが記したもので、本著ではジミーの良いところも悪いところも赤裸々に記載されている。これを読むとジミーがどれほど生き急いで芸術の極みにたどり着こうとしていたか、どれほど人生に悩んでいたかが良くわかる。ブルース・リーになりたかった私は当然、芝居もやりたかったわけで、この本を読み、「芸術家はあらゆる芸術をすべて理解しないといけない」という芸術論や、ジミーが愛した「星の王子さま」の「大事なものは心でしか見えない」という精神論にいたく感化されたものだ。結果、才能のなさに気づいて芝居はやめたものの。文学的小説や絵画などの美術といった分野も趣味となったのはジミーのおかげなのである。
まぁ、私的なことはこれくらいにして映画評に移ると、スタインベック原作でエリア・カザン監督ならば骨太でリアリズムに徹した内容となるのは必然なのだが、その類の映画の中でさえジミーの演技が抜きんでているというのは驚愕に値する。ジミーの生い立ちや複雑な精神構造、本作でのデビューまでの辛い日々をよく知っている私は、本作のキャル自身がまさにジミーが演じるための役柄であると感じてしまい、演技自体が素晴らしいということのさらに奥に、ジミー本人の心の叫びまで汲み取られ、その点からもう私にとって特別な映画という位置づけになってしまう。
もちろん、ジミーからエリア・カザンに推されたレナード・ローゼンマン作曲の有名なテーマ曲や、その他役者たちの確かな演技、メリハリのある脚本、撮影技術など、文学映画としても娯楽映画としても一流だと思う。一方で確かにハイティーンの兄弟を描いたにしては古めかしい内容ではあるが、20世紀初期の話なので、今の時代の若者の感覚でこの物語の表面を理解するものではないだろう。
ただ、どうしても過去2回の鑑賞時同様気になってしまうのが、ヒロイン役であるジュリー・ハリスで、演技は良いのだが撮影当時30歳手前で、皴っぽい皮膚感もあってどう見ても高校生役(それもちょっと無理があるが)のキャルとアーロンとつり合いが取れない。あと、気が触れてしまった兄アーロンのその後をほったらかしというところも少し気になってしまう。