「王様と私」 1956年米 評価2.9


監督:ウォルター・ラング
出演:デボラ・カー、ユル・ブリンナー、リタ・モレノ他

1985年、2022年5月観賞

 1860年代初頭。未亡人だった英国夫人アンナはシャム(現タイ)の国王から、子供たちの英語教師として招かれる。現地に着いたアンナは、国王の横柄な態度に嫌気がさすものの、国王の何十人という子供たちの愛らしさに絆され、教師を引き受ける。

 実在した人物を題材にした小説(事実とは異なる部分も多いらしい)の2回目の映画化となるが、実態としては1951年の舞台化作品の映画化であり、シャムの国王は舞台と同じユル・ブリンナーが演じている。

 内容的には独裁者で子供っぽい国王に、英国人家庭教師が心を通わせていくというのが本筋なのだが、ほぼほぼ王様の性格は変わることはなく、何だが最後は唐突にお亡くなりになって、その本筋も成就しない。舞台作品の映画化であり、映像もそれを意識したと思われ、かきわりのような背景、出演者の観客側を向いての、舞台上のような大げさな振る舞い(特に国王が常に「エッヘン」ポーズで、なぜにそんなに厚い胸板を見せびらかす??)が目立ち、まるで舞台を観ているような感覚で、映画としては違和感がある。また、15分以上に及ぶ劇中劇である「アンクル・トムの小屋」は西洋人が観れば異国情緒を感じるのかもしれないが、正直退屈で、37年前に観た時に評価4.5をつけた理由が全く謎。

 現代においてミュージカル映画としてあまり話題にならない主要因は楽曲の弱さだと思う。「Shall We Dance?」は有名で名曲だが、それ以外はメロディが全く記憶に残らない。さらに、シャム(現タイ)の国王の描き方が、あまりに卑下しているようにも感じられ、それは現代においては問題視されるのだとも思う。