「ゴッドファーザー 最終章:マイケル・コルレオーネの最期」 1990年米 評価4.6


監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:アル・パチーノ、アンディ・ガルシア、ダイアン・キートン、タリア・シャイア他

1991年(パートⅢとして)、2022年4月観賞

 「パートⅡ」から約20年後の1979年。ドン、マイケル・コルレオーネはファミリーの莫大な資金を合法的な投資に変えることを画策し、バチカンより叙勲を受けるまでになっていたが、バチカン市国の金と権力をめぐるいざこざに巻き込まれることになる。

 「パートⅢ」は観ているものの30年以上前なので大筋の内容以外は記憶にない。今回の「最終章」はかなり編集され、アル・パチーノもダイアン・キートンも絶賛しているということだが、残念ながらどこが編集されたのかは全く気付けなかった。

 前半のファミリーが一堂に会するパーティやラストの複数の殺人シーン、オペラの効果的な使い方など、過去作の構成をほぼ継承。実際に起こったバチカンの金融スキャンダルと教皇の急死事件などを題材としてうまく取り込んだ脚本も前2作同様、非常に上手くできている。

 前2作から連なる出演者陣も見事。コニーは忠実な参謀&心のケアマネとして献身的にマイケルに使え、ケイ(ダイアン・キートンは相変わらずおしゃれ)は付かず離れずにマイケルとの関係を継続。その立ち位置も清い。ネリもいい感じで歳を重ねている。一方で、トム・ヘイゲン=ロバート・デュバルが出演していないのが、代わりとなった俳優がいまいち適役ではないのでつくづく痛い。

 少々気になるのは、マイケルが、20年近く修羅場をくぐってきた割にあまり強さやカリスマを感じさせない点。今回はマイケルの最期までの流れを主眼としているので仕方ない面があるのかも知れないが、もう少しカッコいいマイケルが観たかった。しかしその分、シリーズ史上最もエモーショナルな内容となっている。

 シリーズを通して、個人的に唯一の感涙となるのがラストのマイケル。どれだけ家族の愛を切望してきたかが、唯一、愛し合っていることを相互理解していた娘を亡くしたことによる、人目を憚らぬ慟哭の絶叫に集約される。何と哀しい人生であることか、ゴッドファーザーシリーズの帰着点を象徴するシーンに涙が止まらない。

 ヴィンセントは合法的な世界的ビジネスを裏で牛耳ることになるコルレオーネ・ファミリーのドンになるにしてはあまりに普通のチンピラ然としていてとてもマイケル亡き後のファミリーの継続は難しいと感じてしまうのは、本作が深く考えさせられる映画だからこその感想。また、「パートⅢ」においていまいち、という記憶が残っていたマイケルの娘、メアリー役のソフィア・コッポラについては、錚々たる俳優陣の中でほぼ素人同然で浮いていたという記憶があるのだが、編集のおかげか、「最終章」では存外に気にかからなかった。というより、ウィノナ・ライダーやジュリア・ロバーツが演じるよりはイタリア系の顔立ちで良かったのではないかとすら思える。

 兎にも角にも3週連続の鑑賞でゴッドファーザーシリーズは完結。主要登場人物が続けて出演していることもあり、コルレオーネファミリーの大河ドラマの終焉には喪失感を禁じ得ない。これは「スター・ウォーズ」シリーズの完結に似た感情だが、「スター・ウォーズ」が晩節を汚したのに対し、本作は高水準を守り続けたシリーズであったために、その痛みはさらに深い。