「ゴッドファーザー」 1972年米 評価4.8


監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ジェームズ・カーン、ロバート・デュバル他

1983年、1986年2回、1990年、2022年4月観賞

 1900年代中頃、ヴィトー・コルレオーネは身一つでニューヨークマフィアの5大ファミリーのひとつまで上り詰めていた。しかし時代は変わり、労働組合と賭博を資金源とし、政治家に太いパイプを持つコルレオーネは金になる麻薬商売を毛嫌いしていたため、麻薬密売のため政治家との関係を利用したい他ファミリーの反感を買うようになる。老齢のヴィトーは他組織から銃撃され、一命はとりとめるものの時代の変遷とともにマフィア・ビジネスは変わりつつあり、世代交代の波は押しとどめようがなかった。

 これまで4回鑑賞しているのに加え、「ゴッドファーザー・サガ」を2回観ているので、実質7回目の鑑賞となる。たぶん全編通して最も多く観た作品。映画館で観たのは2回目だが、今回の4Kリマスター版の鮮明な映像には、それだけで観た価値があると言えるくらい感銘する。

 冒頭の娘の結婚式で、イタリアンマフィアのファミリーや友人との絆の深さを延々と描くことにより、地域から敬愛されるヴィトーのドンとしての偉大さが醸し出される展開。また、ヴィトーの子供たち(男4人、女1人)の性格分けも丁寧であり、かつ、各俳優たちの熱演もあって、それぞれの出演部分がすべて見応え十分。そのこともあって、マフィアの抗争(ファミリー同士の銃撃戦の描写は皆無)というよりマフィアであるコルレオーネファミリーの、時代に翻弄されながらその地位を保つための生きざまを描くことが主眼となり、単なるマフィアものではない格調高さやドラマ的奥深さを持つ名作。

 カンペを読みながらでもさすがのマーロン・ブランド(撮影当時47歳とは思えない全身での老け演技がすごい)、冷静沈着でありながら主張するところは頑固に曲げない、いかにも切れ者という感じのロバート・デュバルが特に魅力的だが、何と言っても、アル・パチーノ!本作出演時には映画デビューから2年にも満たなかったことが信じられないほどの演技力、眼力、存在感で、大物俳優のブランドの横で、彼を喰うほどの熱演を見せる。私の大好きなのは、コッポラ自身の才能を製作陣に認めもさせた、レストランでの殺害シーン。事前の打ち合わせのようにはできずに、しかし何とか務めを果たそうというマイケルの緊迫感がビンビン伝わってきて、もうそれだけで胃が痛くなるほど。

 本作は明らかに「パートⅡ」への布石が打たれていて、マイケルが二代目に就任した時から、すでにヴィトーの代とは異なった部下の掌握方法が明確に描写されている。この違いが後々マイケルの苦悩に繋がっていくという、続編へのボールが投げられていて、パートⅡでそれをがっちり受け止め、醸成させたからこそ、パートⅠ、Ⅱとも名作という歴史的な作品が出来上がったのだと思う。

 一方、どうしても気になってしまうのは、当初、125分に編集されたものの、製作会社側の意向で177分に再編集となり、何が追加されたのかは今となっては不明だが、マイケルがシチリアに逃亡している期間の描写。このシーンがさして全体ストーリーの中で効果的に寄与していない(ヴィトーのルーツを探るということもなく、ケイと離れ離れになった寂しさという描写もない)ものだから、どうしても冗長に感じてしまい、ここは減点せざるを得ない。