「ベルファスト」 2021年愛・英 評価4.0
監督:ケネス・ブラナー
出演:ジュード・ヒル、カトリーナ・バルフ、ジェイミー・ドーナン、ジュディ・デンチ他
2022年3月観賞
1969年、イングランドのベルファスト。小学生のバディは兄と、ロンドンで働き2週に1回帰宅する父、美しくもたくましい母親と暮らしている。また、近所に住む祖父母の家に遊びに行くのも楽しみの一つ。しかし北アイルランド問題により、バディの住む街区にも紛争が及んでくる。
一応アイルランド紛争をベースにはしているものの、それによって隣人たちが惨いことになるとか、その結末がどうなるかを描くことに力は注がれていない。また、ロンドンで働いている父親像も曖昧なままで、はっきり言うと、核となるストーリーはほとんどない。美しく魅力的な母親に、カッコいい父親、愛情を注いでくれる祖父母といった家族や学友たちとの間の思い出が淡々と綴られていくという感じ。
それは、すべてが子供目線で描かれているからで、自分の街に及んだ紛争もなんとなく狭い範囲で収束しているし、家族たちは魅力的に描かれ、彼らを描く視点は優しく、愛すべき記憶を綺麗に映像化したという、非常に個人的な内容の(特にブラナー監督にとっては)愛情溢れた作品となっている。空から俯瞰した映像の多用や、演者を中心におかない画角構成、モノクロとカラーの使い分けなどは嫌味にならないほどに効果的であり、心ときめかせた子供時代に観た映画の魅力も表現されている。ドラマとしての魅力は薄いが、映画としての魅力は十分に保有している作品。