「ゴヤの名画と優しい泥棒」 2022年英 評価3.0
監督:ロジャー・ミッシェル
出演:ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド他
2022年3月観賞
1961年、イギリスのニューカッスル。定年後パートタイムの仕事をしながら、年金と、議員夫人家の召使をしている妻の給料で暮らしている60歳のケンプトン・バントンは、定年後の孤独な高齢者のために公共放送BBCの受信料無料化を求める活動に熱心に取り組んでいたが、TVで英国が税金でゴヤの名画を14億円で購入したことに腹を立てる。
信じがたいが、1961年にロンドン・ナショナル・ギャラリーにて実際に起きた名画盗難事件をベースにしている。その事件の顛末が本作の主軸にあるのだが、長男とその恋人、パン工場でのパキスタン移民とのやり取り、議員夫人と妻との関係、かなり時間を割かれる裁判シーンなどが、それぞれ頻繁に挿入され、かつなんとなく深掘りがないまま終わってしまうので、主軸の物語の印象が薄れ、正直、全体的に散漫な印象。
一方で、老夫婦の生活、次男との関係の描き方は良い。特に妻を演じたヘレン・ミレンがやっぱり上手くて、本映画の中で唯一ぶれない中心に鎮座していることで何とか全体としてのまとまりを保っている感じ。せっかく芸達者な二人が老夫婦を演じているので、その人生をベースにした人間ドラマを掘り下げればもっと濃い内容になったのではないかと思われる。