「ウエスト・サイド・ストーリー」 2021年米 評価1.5
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ他
2022年2月観賞
ニューヨークの下町のギャング集団「シャークス」と「ジェッツ」の抗争が勃発する前夜、元「ジェッツ」のリーダー的存在で1年の服役から帰ってきたトニーは「シャークス」のリーダーの妹と恋におちる。
オリジナルの1961年版を観たのは高校生だった1986年で、その時の評価は1。歌と踊りには見所はあるものの、1時間にまとめることも十分可能な単純なストーリーには2時間半は長すぎ、退屈以外の感想を持ちえなかった。そんな気持ちはあったものの、スピルバーグがわざわざミュージカルを監督するということで、再チャレンジの気持ちで観てみたのだが、やっぱり私はストーリーに魅力がなく、しかも唐突に時間をかけて歌と踊りを披露するという映画は苦手だということを確信するに至った。
とても原版に忠実に製作されていて、だからこそわかり切ったストーリーに新鮮味はなく、現代版「ロミオとジュリエット」の拙速版とでもいうような、一夜にして一目惚れ(それはまだ許そう)、翌日二人で駆け落ち(兄を殺した男と、その殺害を知った数分後に駆け落ちを決意など、ひどすぎる)を約束という展開には全くついて行けずにさめざめと傍観してしまう。一方、原版に忠実なアレンジの楽曲群はやはり名曲ぞろいで、それにのったキレの良いダンスは見所ではある。
ストーリーはさることながら、輪をかけて評価を低下させる原因は、トニー役のアンセル・エルゴート。ほかの役者たちは基本、ダンスもするので体は引き締まり、鍛錬により顔つきも精悍なのだが、エルゴートだけがベビーフェイスで、どう見ても歩き方や走り方からして上等な運動神経があるとは感じられない。動きも緩慢で、とても「ジェッツ」の元リーダー格とは思えないし、1年服役していたという精神的な逞しさや緊迫感がさっぱり感じられない。マリア役のレイチェル・ゼグラーは3万人のオーディションを勝ち抜いただけあって頑張っているけれども。
ストーリーは単純明快でわかり切っているので、後半1/3くらいは上映時間の長さもあって早く終わらないかなという気持ちを抑えられなかった。良かったのは、当時の雰囲気を感じさせるセットと凝った映像、それと名曲群だけ。