「暴力脱獄」 1967年米 評価4.2
監督:スチュアート・ローゼンバーグ
出演:ポール・ニューマン、ジョージ・ケネディ、ルー・アントニオ他
1984年、2022年2月観賞
戦争で多くの勲章を得て軍曹まで昇進しながら、夜の街で酔っ払いパーキングメーターを損壊した罪でフロリダの刑務所に2年の刑で収監されるルーク。釈放まであとわずかという時に愛する母親が死ぬが、精神的ダメージを逆サイドに考えた所長は、ルークを理不尽にも独房に閉じ込める。ルークはその後、脱走を企てるようになる。
反体制的な内容で救われないラスト、というのが当時のニュー・シネマに共通する内容だが、本作もその系譜に連なるもの。主人公ルークの、厭世観を漂わせ、どのような信念に基づいているのかわからない行動は、どの戦争だかは明らかにしていない(なんとなく第二次世界大戦という感じ)が、それによる後遺症を感じさせ、その意味では主人公の描き方はかなり「タクシー・ドライバー」に似ており、観客には登場人物の心情を想像することが求められる。美しい風景や達者な役者たち、内容によく調和しているラロ・シフリンの音楽、ほんの数分の母親(「エデンの東」でも同様の母親役を演じていたジョー・ヴァン・フリートが秀逸。ジミーとポールは友人でもあったから、なんか感慨深い)とのやり取りにより、出来損ないのような母親を愛しているルークの心情を描き出すような脚本など、主人公の精神は朧気な反面、周りはがっちりと固めていることで非常に人間ドラマとして完成度の高い作品と言えよう。
特典映像で分かるのはポール・ニューマンが役者仲間からも尊敬を集めていたこと。そのスマートな外見からなんとなくスター然とした大根役者っぽい(私の勝手な)イメージを持っていたが、アクター・スタジオ出身だし、本作で確かな演技力を堪能。映画に打ち込む姿勢は真摯で、夫婦仲も良くて慈善事業に熱心。まさにスターらしいスターで、トム・クルーズが憧れていたのも良くわかる、素敵な漢。その魅力の多くを表現できている、彼の代表作の一つとして挙げられる作品だと思う。
原題は「Cool Hand Luke」というカッコいいもので、この邦題は何とかならなかったのかねぇ。暴力的な脱獄という内容では全然ないし、この邦題によって視聴を避ける人もいるだろうに。