「男はつらいよ 柴又慕情」 1972年日 評価3.1
監督:山田洋次
出演:渥美清、倍賞千恵子、吉永小百合、前田吟、松村達雄、三崎千恵子、太宰久雄他
1985年、2022年2月観賞
シリーズ9作目。櫻夫婦が一軒家を買うことを決め、その少しの足しになるようにと、おいちゃんたちは寅次郎がいない間に、2階の空き間を人に貸すことを決めたが、おり悪くそこに寅次郎が帰ってくる。激怒した寅次郎はまた旅に出るが、北陸で、OL三人組と意気投合する。
前半の博と櫻が一戸建てを買おうとする下りでの寅さんのセルフはあまりに人の気持ちを踏みにじるものでひどすぎる。さらに詫びも入れずにまた風来坊の旅に出るので寅さんの人間性に疑問符がついてしまう展開。また、吉永小百合演じる歌子との恋慕の段階になっても、どう考えたって歌子が寅さんに惚れるわけがないのに一人勘違いしているという図式がちょっと無理やりっぽいため、正直、本作の寅さんはバカ話をしている分には楽しいだけのおじさんでしかなく、魅力を感じることができないという内容になっている。
また、頭尾の登とのやり取りはストーリー上意味がないし、歌子サイドのエピソードもなんか深掘りが足りない。また、歌子は櫻夫婦には旅先で知り合った寅さんを訪ねたとらやで会っただけなのに、2回目には結婚についての至極プライベートな悩みを打ち明けるという展開にも無理があり、ストーリーがかなり雑である。
本作の見どころはタコ社長の突っ込みが絶妙であるところなどのコメディ部分と、吉永小百合の美しさ。撮影当時27歳とそこそこ歳はいっていたが、顔の造りはモロ私の好みで、1985年の高校生の時に観た時は評価4.5をつけた原動力は間違いなく彼女がマドンナだからだと思われる。なお、本作からおいちゃんが松村達雄に代わっているが、顔の造りや表情が先代に良く似ており、初め、少し違和感は感じたが、鑑賞中交代に気づかなかった。
結局、リリーと絡むシリーズが寅さん自身の魅力が一番よくわかり、単にマドンナに恋をして振られてという繰り返しなら、特に定期的に見る必要はないのかもしれないと感じ始めた。