「CODA あいのうた」 2021年米 評価4.2


監督:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、マーリー・マトリン他

2022年2月観賞

 アメリカの田舎の漁業都市に住むルビーは聾唖の両親と兄をもつ健常者の女子高生。家族の耳と口となり、父と兄と一緒に漁に出てから登校というハードな生活を続けている。ある日一目ぼれした男子生徒と同じクラブ活動をする目的で合唱部に入るが、部の顧問である音楽教師はルビーの才能を見出す。

 障害のある家族、仲の良い両親、最後は自身の才能を開花させてハッピーエンドというストーリー(一番似ているのは「ワンダー 君は太陽」かな)はストレオタイプで何ら目新しいものはなく、正直先が読めまくりで、その点での面白みはない。

 一方、70,80年代の洋楽ロック/ポップスが大好きな私にとって、劇中の音楽は心地が良いし、主人公ルビーを演じたエミリア・ジョーンズの歌声も耳障りが良い。間違いなく音楽は嬉しさや哀しみといった気持ちを助長するアイテムであり、否が応でも感情が映画の中に、より引きづりこまれることになる。ルビーの家族3人は実際に聾唖者の俳優を使っていることもあり、彼らの障害者としての憤りや不安感、戸惑いなどが自然と表現されているのもいいアクセントになっている。ありふれたストーリーではあるが、その類の中で純粋に良い映画であるとは言えると思う。

 映画の内容とは異なるが、驚き&うれしかったのはルビーの所属する合唱部の舞台発表の際に使われた「スターマン/デヴィッド・ボウイ」。ここでその曲来るか!?という場面で、でもその歌詞が微妙に映画のシーンにマッチしていて、やはりう~ん、やはり名曲!!それと、異様に色っぽい聾唖の母親がなんとマーリー・マトリン!!拝見するのは「愛と静けさの中に」以来。ずば抜けた美貌とスタイルをお持ちなのはそのデビュー作で堪能できていたのだが、聾唖者であることもあって映画出演は少なく、私にとって実に35年ぶりの鑑賞で、観ている間は誰だか分らなかったがエンド・クレジットで「Marlee Matlin」と出て、驚くと共に納得するやら懐かしいやら。なんとなく、旧知の人を久しぶりに見かけたら元気だったというほっこり感。