「スリー・ビルボード」 2017年米 評価4.5
監督:マーティン・マクドナー
出演:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル他
2022年1月観賞
7か月前のレイプ事件で娘を殺害されたアンジェラは、一向に進まない捜査に業を煮やし、地元の殺害現場近くの道路沿いに立つ3枚の広告板に「娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」というメッセージを張り出した。その看板は地元警察と住民の心をかき乱す。
アンジェラの、娘を惨殺された悔恨の念や、捜査が進まないことに対する鬱屈した気持ちからのメッセージ掲示の心意気も、世相を慮って何をしないのでは自分自身が納得いかないという気持ちも良くわかる。自身の気持ちを正直に行動に移す強い人間であるアンジェラには一種の清々しさを感じる一方で、負の連鎖は誰かが止めなければ終わりがないということも事実をも同時に痛感させられる。その狭間で揺れる登場人物をフランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルといった、一癖ある俳優陣が巧みに演じ、表面的には劇的な展開はほとんどないのだが、緊迫感ある時間が過ぎていく。
ストーリーは単純な勧善懲悪ではなく、登場人物たちは善と悪の間で揺れ動き、自分の納得できるポジションを探している。ミステリーという体をとってはいるが、見どころはその異人間の人間模様と自身の中の葛藤。そのため、事件の真相を追うという姿勢で観ていると、最後まで全く肩透かしを食うという内容なのだが、ただの犯罪の真相究明以上に深い、心の闇が浮き彫りにされていく道程は圧巻。
ラストは中途半端にも感じられるが、二人のそれまでの心の動きから察するに、復讐は必ずしないであろうということを読み取らせるという、現代社会は単純な二者択一で人生は進んでいかないというメッセージをも感じさせる。