「タワーリング・インフェルノ」 1974年米 評価4.3
監督:ジョン・ギラーミン
出演:スティーヴ・マックィーン、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン他
1982年、2021年12月観賞
サンフランシスコにそびえ立つ138階建ての超高層ビル。その落成式の日、81階において、コスト削減のために仕様を下げていた電線のショートによる火災が発生。その上層階で行われていたパーティ参加者は逃げ場を失う。
2時間45分という上映時間の数字は長いという先入観を持たせるし、最近のスピーディな展開に慣れた観客には実感としても長く感じると思う。しかし、逆に、豪華キャストをふんだんに使用したドラマ面を丁寧に描くことで、普通の人間がパニックに陥る様、あっけなく死んでいく/生き残ることによる人生に与える影響なども浮き彫りにして、パニック映画としてやはり金字塔だと思う。
本作では一般人であるはずの人間が超人的活躍をするという場面は一切ない。消防隊長のマックイーンは組織の指揮のもと、黙々と消火・救助活動に当たるだけで、アクロバティックな救助活動をするわけではない。設計技師のニューマンは設計士の割にあまり消火の際に役に立たず(最上階の水タンク爆破の提案は別の技術者だし)、使用している電線の仕様変更についてビルの社長とその娘婿と問答をすることが中心。
そのようなあくまでも一般的な人がどういった気持ちで消火・救助活動にあたるのか、パーティの最中に火災に見舞われたセレブたちがどう行動するのか、がリアリティ濃く描かれていて、映画として楽しいか?という観点はあるにしても、私としてはそのリアルに徹した内容によって緊迫感が助長されたと感じる。
この時代の作品、しかも2大製作会社の共作という娯楽大作にしてはかなりショッキングなシーンも多く、近年、コスト削減のための仕様偽装を原因とした建築物の事故事例は枚挙にいとまがなく、高層ビルの火災も現実に起こっていて、かなり時代を先取りした内容であるとも言え、単に豪華キャストという話題のみに収束する映画ではない。