「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」 1980年日 評価3.2
監督:山田洋次
出演:渥美清、浅丘ルリ子、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄他
1987年、2021年9月観賞
寅次郎がふらりと柴又のとらやに戻ってきた時に、リリーからの手紙が届いた。手紙には「沖縄で病気になり、すでに人生に未練はない」というようなことが書かれていた。心配になった寅次郎は嫌いな飛行機にも何とか乗って、沖縄に飛ぶ。
1987年の1回目の鑑賞時の評価は2。この低評価の最大要因は間違いなく、瘦せぎすの浅丘ルリ子にまるで魅力を感じなかったことだと断言できる。しかし、今観返すとそれ以外の理由にも気づく。まず、冒頭の夢シーン。さすがに何本も本シリーズを観ると(今は3週間に1本ペースで観ているので特に)、シチュエーションを換えるのみのこの部分はさすがに飽きてくる。そして、本作は3回目の出演でほぼ身内同然となっているリリーがマドンナでその他のサイドストーリーがないため、寅次郎とリリーのシーンを除くと物語に起伏がなく、他の登場人物との絡みにもマンネリ感を禁じ得ず、笑えるシーンも極めて少ない。
一方で、やはりリリーがマドンナの回は寅次郎が見せる内面の幅と襞の深さが他作とは明らかに違うのは事実であり、二人のやり取りの部分、その目線による演技などすべてを含めた諸々が秀逸である。しかし、リリーの告白同然の言葉に対しての寅次郎の取る態度がテレから来ており、さらに寅次郎は決断から逃げているだけの行動を続ける。病身のリリーをほったらかして若い女性と戯れる、夜に帰ってきては夕飯を配膳をしているリリーに当然だといわんばかりの態度。時代が違うとはいえ、本作の寅次郎は徹頭徹尾カッコ悪いんだよなぁ。それでも似たもの同士、最後には仲直りしている姿に感じる爽やかさは良い。