「キャプテン・フィリップス」 2013年米 評価4.2
監督:ポール・グリーングラス
出演:トム・ハンクス、バーカッド・アブディ、キャサリン・キーナー他
2021年9月観賞
2009年にソマリア沖で発生した、ソマリア人海賊による米国籍貨物船マースク・アラバマ号乗っ取り事件をベースに、ソマリア人海賊の人質となった船長のリチャード・フィリップスを中心に描いた実話に基づく映画。
プロでもない4人の海賊の行動は統制も取れてないし粗雑。一方で貨物船には海賊を迎撃できるような武器は備えていないし、乗組員も戦闘の経験はない。そのような状況下での相対する2組の駆け引きや行動はスピーディに、且つ登場人物のアイデンティティも適切に描かれていて、この種のサスペンス映画としては最高級の面白さを持っていると思う。
密室の船長や船員とソマリア人海賊とのやり取りの真否はもちろん知る由もないが、それ以外の部分は事実に忠実に描かれているようで、後半の海賊vs米軍のやりとりの緊迫感も半端ない。確かに交渉に対峙する米軍のヒーロー的描き方が鼻につく人もいるだろうが、これが事実なのだろうし、逆に日本の自衛隊だったら何もできないんじゃないか?と思うに、やはり羨ましいし、交渉人とかプロの狙撃手などのプロフェッショナルなところは事実であり、頼もしいと思う。
最後の15分まで全くスキのない傑作と思っていたが、最後1点、大きく腑に落ちないところがありかなりのマイナス点となる。それは、救命艇の中でも海賊たちをつぶさに観察し、直前に海軍から渡されたTシャツを着た(そのシャツを着ているのが船長であることを明示するため)船長が、米軍に助けられるのは時間の問題となっていたところでいきなり妻への手紙を書き始め、海賊の一人に突っかかっていった描写。閉鎖された空間で精神的に参ってきているのはわかるが、直前までそのようなシーンはなかったものだから、「船長、何やってんだよ?」と意味が分からなかった。
トム・ハンクスはさすがに鉄壁の上手さ。このような強い意志と相反する普通の人間の心情を持った人物を演じると抜群。