「ドライブ・マイ・カー」 2021年日 評価3.7
監督:濱口竜介
出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生他
2021年9月観賞
舞台作家で俳優でもある家福は、自宅で若い俳優と情事に耽っているTV脚本家の妻を目撃するが、彼はその後も妻の行為を咎めることなく自然に夫婦生活を続ける。ある日、「夜、話したいことがある」と妻に言われた家福が深夜に帰宅してみると、妻はくも膜下出血で死んでいた。
チェーホフの「ワーニャ伯父さん」の戯曲とそのセリフがサイドストーリーとして何度も出てくることもあって、とてもセリフを大事にしている映画で、その言葉の持つ意味の深さで紡がれる3時間は非常に濃密で緊張感に溢れているし、村上春樹の3つの短編小説を巧みに取り入れたストーリーも観客の興味を逸らせない。カンヌ映画祭で脚本賞を受賞したのも納得。
一方で少し気になるのは、若いイケメン俳優である高槻(岡田)が実はいろいろな犯罪を起こしてきた異常者であったことと、ラスト、なぜにドライバー渡利(三浦(田畑智子を彷彿とさせる))が韓国で暮らしている?という点。前者はその設定によって、せっかく物語の重要な部分を担う存在となった高槻のセリフが軽々しいものになってしまったし、後者はその渡航の選択までの過程が良くわからない。
また、映画として完成度は高いが、あまり胸に刺さってこないのは、余りにきつい人生を送ってきた家福と渡利が偶然出会うということにより、全体として、どこにでもいる悩める人ではなく、特別な二人の悩める人生を描いている印象となってしまうことが原因であると考えられる。