「ガタカ」 1997年米 評価3.3


監督:アンドリュー・ニコル
出演:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、アラン・アーキン、ジュード・ロウ他

2021年8月観賞

 近未来。人類は優秀な遺伝子を持った細胞による人工授精と遺伝子操作により優れた知能・体力・外見を持った「適正者」と、自然妊娠で生まれた「不適正者」に分けられ、実際に優秀に育つ「適正者」たちは「不適正者」とは区別された上層社会で暮らしていた。ヴィンセントは「不適正者」として産まれ、生まれつき虚弱体質というハンデを背負っていたが、宇宙飛行士になるという強い意志の下、DNAブローカーの仲介により強靭な「適正者」であるが事故により下半身不随となっていたジェロームの協力を得てついに宇宙局「ガタカ」の社員となる。

 端的に言うと、良い発想・素材により期待をもたせてスタートしたが、その土台から広げられず、しかも曖昧なラストになってしまった残念な作品。

 「適正者」と「不適正者」に分けられた社会。「不適正者」の苦悩と無機質な「適正者」達。レトロな外観の自動車などの近未来感など、始まりはかなり良く、途中で殺人事件が起きてミステリー的な進行にも興味は続く。ところが、終盤になるとネタが尽きたという感じで、同じような、”正体がバレるかも”の繰り返し。しかもそこで色々なほころびに気が散ってしまう。医師の目の前で採尿・採血しているのにどうやってごまかせるの?どうしたってヴィンセント本人の遺伝子が混じるだろうに??(医師が見逃しているともとれるが) そもそもイーサン・ハントとジュード・ロウの顔は全然似てないし。そして、う~んとなってしまうのがラストの締め方で、「適正者」で刑事として法令違反を繰り返す「不適正者」を追う立場である弟との決着。30を過ぎた男同士が子供の時のしがらみで海での遠泳で勝負付けするか?しかも荒波の中飛び込んでいったにも関わらずなぜか直ぐに凪状態。そしてこの兄弟の確執の結末は不明で、弟は結局どうなったのか?の答えはない。また、「適正者」でありながら体に弱さを持ったアイリーン(ユマ・サーマンの人間離れした容姿だけはケチのつけようがない)との終着点もよくわからないまま。

 ネタと雰囲気は良いが、そもそもヴィンセントの宇宙飛行士になりたい動機が不明で、映画としては一本筋が通っているとは感じられないという印象。持って生まれた遺伝子に負けるなってことなのかな。でもそれならSFじゃない現実社会で描いた方が個人的に心に響く。