「男はつらいよ お帰り寅さん」 2019年日 評価3.0


監督:山田洋次
出演:吉岡秀隆、後藤久美子、倍賞千恵子、前田吟、池脇千鶴他

2021年7月観賞

 脱サラして小説家となった満男は、早逝した妻の7回忌で葛飾柴又の実家に帰り、今は亡き伯父(寅次郎)に想いを馳せる。その後、自作のサイン会にて遠い昔に別れ離れになった恋人で、今はオランダに住み、国連関係の仕事で世界を飛び回る泉と偶然再会する。

 満男役の吉岡秀隆の目をむくような奇妙な表情と良い子ちゃんすぎる娘との会話の気持ち悪さが最後までぬぐえない。また、私は満男と泉の物語が描かれていた本シリーズは1作も観ておらず、二人のストーリーの土台になっている部分を知らないので、何となく話の進行に違和感があり感情移入もできない。結果としてストーリーは平凡と感じざるを得なく、リリー登場のシーンを除くと変哲もない。演出面でも、何で最後になって自分の妻が亡くなっていることを告白する必要がある?というような腑に落ちない場面も多い。一本の映画として致命的なのは、回顧シーンが多いため、本シリーズを観てない人(まぁ、そんな人がいきなり本作を観るとは思えないが)には映画の内容がほとんど伝わらず、観続けることさえ苦痛と思う。

 しかし、そのような諸々をすべて救ってくれるのがやはり渥美清の顔力の魅力と長年シリーズで共演してきた出演者がほぼ同じ顔ぶれで登場という奇跡。そのため何とか「まぁ観て良かったかな」の評価3には到達。

 本作を観るとやっぱり第1作とリリーがマドンナとなった4作は特別なのだろうなと思う。私はこれまでの本シリーズ鑑賞は1980年代の10代のころに11作品、30年以上のブランク後に昨年第1作目を観ている経緯があり、今もう一度観返せば、10代のころと違った気持ちで観られるのかなと思い始めた。幸いなことにリリーがマドンナの作品は最初の「寅次郎忘れな草」しか観てないので、このリリーシリーズを観返そうと思う。