「ロミオとジュリエット」 1968年米 評価4.5
監督:フランコ・ゼフィレッリ
出演:レナード・ホワイティング、オリヴィア・ハッセー、マイケル・ヨーク他
1988年、2021年6月観賞
1600年ごろに刊行されたとされるシェイクスピアの有名な戯曲を原作とした作品で、調べられる範囲では本作は5度目の映画化らしい。
シェイクスピアの戯曲は「リア王」しか読んでいないが、時代遅れの内容で、大げさなセリフ回しを延々として話は遅々として進まず、まどろっこしくて途中でやめたいくらいだった。もちろんそれ以来二度とシェイクスピア作品を読みたいという気になっていない。
本作も前半はまどろっこしいセリフが多いし、語り部の道化師役もうざい感じを受けざるを得ないが、まぁ、現代の感覚で映画を観てると思っちゃいけない。シェイクスピアの戯曲を観ているんだと気持ちを切り替えれば、その違和感は結構すぐに氷解する。それにジュリエット役のオリヴィア・ハッセーが出てきてからはもうすんなりと1600年という時代に飛んで行ってしまう。
それほどまでに本作のハッセーの美しさは完ぺきで、まさに“君は薔薇より美しい”(by元夫布施明)そのもの。当時16歳のハッセーの顔の造形はあどけなさを残しながらも美しさを隠し切れない。そしてミドル・ティーンの特徴である肉付きの良さは絶対に20歳を超えた女優には体の造り上どうしても作れないもので、ハッセーはまさにこの役のためにこの世に出でて一世一代の演技を見せたといえよう。この役があまりに完全だったために、それ以降は役者として大成しなかったのは、「小さな恋のメロディ」のトレイシー・ハイドや「アメリ」のオドレイ・トトゥと同様、キャリアの初期に人生最高の適役を演じてしまった弊害でもあると考えられる。
ハッセーが美しいことはさておいても、ロミオが最初に恋しているロザリンドも非常に美しいし、今の時代としても結構個性的なイケメン達が大挙して出演しているので目福である。また映画としても、ジュリエットの乳母や道化役はいいアクセントになっているし、上述の通りジュリエット登場以降、映画の中の戯曲を観ているという感覚になれればやはり名作という評価は妥当。
本作の前の20数年間で4回映画化されたものの、本作後は舞台を現代にした亜流のリメイク(レオ主演)は別とし、2013年英国製作でほとんど話題にもならなかった1本しかないのは、ニーノ・ロータの忘れ難き主題歌とともに、(何度でもいうが)、ハッセーがあまりに美しく完璧なジュリエットだったことが大きな要因だと思う。このハッセーがいるだけで+0.5評価を上げてしまうくらい。