「ホテル・ニューハンプシャー」 1984年英・加・米 評価4.3
監督:トニー・リチャードソン
出演:ジョディ・フォスター、ロブ・ロウ、ポール・マクレーン、ボー・ブリッジス他
1990年、2021年6月観賞
ニューハンプシャー州に住む、高校教師の父を持つ5人兄弟姉妹と祖父たち8人の家族。家族でのホテル経営を夢見る父は、教師を辞めて地元のホテル経営を始めるが、やがて高校時代のアルバイト時に出会ったクマを連れた大道芸人からの誘いでウィーンのホテル経営のため家族と共にヨーロッパに渡る。
ジョン・アーヴィングの小説は、現実的にはあり得ないようなシチュエーション、展開で進んでいくものの、作品としては、困難な人生でも前向きに楽しんで生きていこうという主張が全編から感じられてかなり好きな部類に入り、本作は「ガープの世界」と並んで大好きな作品。
私の場合、小説を読んでいるからそれぞれの場面の経緯も持つ裏の意味合いもかみ砕きながら見られるので、上下巻800ページを超える長編原作の映画化ではあるものの、それぞれのエピソードの持つ深さや温かさ、周囲の人の気持ちを巻き込んだその場の雰囲気というものまで想像できる。長女のフラニーを除いて引っ込み思案な兄弟たちは、父の強引なホテル経営という人生に振り回されながらも、徐々に成長を見せる。そしてどんな状況であっても兄弟姉妹協力しながら何とかその環境に順応し精一杯、しかし青春時代をしっかりと楽しみながらも生き抜いていくという前向きなメッセージを感じられ、110分という尺にしては上手くまとめたといえるのだが、正直、映画だけだとエピソードをなぞるような感じに受け取られるのだろうな、とは思う。
何にしろ最大の魅力はジョディ・フォスターとナスターシャ・キンスキーという美貌と演技力を兼ね備えた二人。フォスターは本作が3年のブランクを経ての久しぶりの本格的な出演作品であり、学業を優先していたためか女優歴上もっとも肉付きの良い時期で、それが返って女子高生っぽさを際立させ、一方でやっぱり顔つきは美しく、勝ち気で行動的で語り部となる弟の憧れの人という役割がはまり役。キンスキーは本作の頃が最も美しい時期で、過去の経験から、自分に自信がなく人には嚙みつくものの実は優しい心を持った、熊の毛皮を常に着た変わった女性役がとても魅力的。