「シンシナティ・キッド」 1965年米 評価4.2


監督:ノーマン・ジュイソン
出演:スティーヴ・マックィーン、エドワード・G・ロビンソン、アン=マーグレット他

1985年、1993年、2021年5月観賞

 若くしてポーカーの名手として台頭してきたシンシナティ・キッドは、街にやってきた、30年間も全米でNo.1プレーヤーとして君臨してきたザ・マンとついに手合わせすることとなる。初めは5人でテーブルを囲んでいたが、やがてキッドとザ・マンの二人だけの勝負となる。

 私は中学・高校時代、休み時間や放課後に友達とトランプでよく遊んだもので、当然ポーカーもよくやった。私たちがやっていたのはクローズド・ポーカーだったが、もちろん手の強さの順番は熟知している。本作で描かれるスタッド・ポーカーは1枚だけプレーヤーのみが見て、後はすべてオープンに配られ、しかもカード交換はない。つまり、クローズドに比べ、手はでき辛いし、駆け引きの要素が強いゲームとなる。この基本ルールをわかっているかどうかは、映画評に影響を与えると思う。

 キッドvsザ・マンのポーカーゲーム(その前夜のミーティング等を含む)が全体の半分近くを占め、それ以外は正直何ということもないストーリーが展開されるが、あくまでそれらは二人の勝負までの前振りにしか過ぎない。しかし、スタッド・ポーカーだからこその手ができない中での駆け引きも丁寧に描かれていて、ポーカーを題材にした映画として秀逸だし、主役二人をスティーヴ・マックィーン、エドワード・G・ロビンソンという名優が演じるため、ゲームシーンの緊迫感がすさまじい。

 マックイーンを観るための映画ということもできる。魅力的な美女二人が常に近くにいて誘われても溺れることはなく、時に強く、しかし冷静で自分を持ち、鋭利な視線と時に子供のような笑顔を見せ、まさに男が惚れる男。マックイーンを観ているだけで惚れ惚れしてしまう。

 以前鑑賞時は主人公キッドの一途な恋人役チューズデイ・ウェルド(当時21歳)が好きだったが、今観ると圧倒的にアン=マーグレットに魅力を感じる(当時24歳であの色気とは驚き!)のは、私が歳をとった紛れもない証拠。