「イエスマン」 2008年米・英 評価4.5
監督:ペイトン・リード
出演:ジム・キャリー、ズーイー・デシャネル、ブラッドリー・クーパー他
2021年5月観賞
銀行員のカールは3年前に離婚してから、親友らの色々な誘いにも言い訳を作って参加せず、勤務時間外は家に籠ってレンタルDVDを見るだけの生活を送っていた。しかしある日知人の紹介で、イエスと答えていくだけで人生が変わるという怪しげなセミナーに参加し、嫌々ながらイエスと答え続けることを実践するようになる。
まず、冒頭でのカールの携帯着信音にJourneyの「Separate ways」のイントロが流れてきて、70,80年代洋楽バカの私は「おっ」と反応してしまう。その後、カールは怪しげなセミナーに参加し、その流れでなんでも「Yes」と答える生活を実践し始めるのだが、それがあまりに極端すぎて、イヤイヤそんななんでも「Yes」と答えてたらお金も体ももたないでしょ、と感じてしまうのだが、カールに浴びせられる要求が大げさすぎるのと、悪乗りすぎるコメディ部分(これが結構個人的にツボにハマり、声をあげて笑えるシーン多数)から、楽しんで観ていこうと感じ始めた。
ところが、とんでもない要求に対してカールが得られる見返りは意外と小粒で(銀行での重役採用は別)、それでも明るく人生を楽しむように変わっていくカールを観ていると、この映画の本当の主張したいところと思われる、「面倒くさいとかやらない理由を作って何かを避け続けるのではなく、何でもやってみることが人生を豊かにする」というような人生教訓が段々と心に浸透してくる。特に印象に残るのは出たとこ勝負の旅行でネブラスカ州に行き、さして面白くもないだろう時計博物館やチキン精肉工場の見学、クレー射撃を楽しんじゃうシーン。そうなんだよ、最初っからつまんないと思えばなんだってつまらない。楽しもうと思えば必ず楽しむネタは見つかるはずという、何度も私自身過去に思っていたことを再び思い起こさせてくれる。
映画としての構成もしっかりしていて、前半でのエピソードは後半にしっかり生きてくる(「Separate ways」もぴったりの使い方で帰ってくる)し、全体としては極端な設定の中でのコメディーという分類なのだろうが、私は本作のように、実際の人生に対して前向き、またはより良くするような気持ちを感じさせてくれる内容が好物で、程よいロマンスの入れ方も申し分ないので、結構癖になりそうな良作と感じている。
ヒロイン役のズーイー・デシャネルが美人過ぎない顔立ちながら、主役のジムが強烈なキャラだからちょうどよいバランスと雰囲気で、私自身ツンデレキャラだけど純粋というヒロインが結構好きなので、この配役も絶妙と思う。