「0.5ミリ」 2013年日 評価2.5


監督:安藤桃子
出演:安藤サクラ、坂田利夫、津川雅彦他

2021年5月観賞

 山岸サワは高知県に住む30歳前後の独身女性の介護ヘルパー。ある日派遣先の家で、介護している老人男性の娘から、父と一夜だけ一緒に寝て欲しいと頼まれる。夜中に顔を嘗め回す老人に驚き寝床からはい出したところ、娘は首つり自殺していた。その後もサワは高知県内を転々とし、様々な老人と一緒に暮らすことを継続する。

 一言でいうと、安藤サクラの演技力をうまく生かせず、結果、振り回されてしまったという映画。まず、主人公のサワは劇中、5人の老人男性と深い接点があるのだが、サワの行動原点がどこにあるのかがわからない。痴呆の入った老人の弱みに付け込んで一緒に暮らすようになるが、決して財産目当てというわけではなく、無駄使いはせずに家事に勤しむ。といって老人におっぱわれそうになると、奇人の振る舞いに出る。そういう振れ幅の大きい人物を芸達者の安藤が演じるものだからどれも真実味がある結果として、主人公サワという人間の深層を理解できない。

 5つのエピソードが順次完結しつつ進んでいくストーリーで、老齢化問題の深刻さを感じさせるし、数十年後の自分もそうなるのかと思うと戦慄するのだが、それぞれのエピソードがバラバラで、またそれぞれの帰着点も良くわからない。また、差し込まれるイベントについても繋がる先がない、またはわからないという、オムニバス版にありがちな欠点も感じさせる内容で、安藤サクラの演技がすごいなということ以外、結局この映画は何だったんだ?という薄い記憶しか残らない。