「かもめ食堂」 2005年日 評価3
監督:荻上直子
出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ他
2021年5月観賞
フィンランド、ヘルシンキにオープンした、一人の日本人女性が切り盛りする「かもめ食堂」。オープンからひと月しても誰も客がなかったが、日本かぶれの現地学生を皮切りに、日本から来た素性不明の中年女性二人がお手伝いに加わりつつ、やがて賑わいを見せ始める。
慌てない、自然のままにふるまう日本からの中年女性たちとヘルシンキの落ち着いた佇まいに居心地の良い時間を感じるのだが、なんだか映画として魅力が薄いなと感じてしまう。
食堂なのだから料理がおいしくなくてはいけない。凝った料理を出すという類の店ではないのはわかるのだが、北欧特有の新鮮な素材や日本の米のおいしさなどは表現しても良かったと思う。その表現は映像的にも演出的にもほとんどなく、残念ながら作っている料理がおいしそうに見えない。それと、おばさんたちが目の前で素手で握ったおにぎりを食べるというのも若干抵抗を感じてしまう(これは決して今のコロナ禍で培われた感性ではない)。
それとどうしても感じてしまうのが、北欧に居るという雰囲気の希薄さ。フィンランドの大自然や気候の厳しさ、サウナなどの独特の文化というものはほとんど映像にでてこないから、食堂に来るお客以外に海外が舞台ということが感じられない。登場する日本人三人のうちフィンランド語ができるのは主人公のサチエだけ。その他二人はサチエの周りで生活するだけで決して現地で馴染んで暮らそうともしない。言葉が通じない国での寂しさや孤独さが全く表現されないので、正直言って、日本が舞台でもよかったんじゃないかという作りになっている。
雰囲気だけでいいなぁと感じる人もいるかもしれないが、海外の異文化の言葉も通じない世界で生きるということは非常なストレスであり、そんな生易しいものではない。そういう部分が全く描かれていないので、海外生活の良いと思われる部分のみをサラッとなぞっただけの映画という感想。
ちょっとしたアクセントとしては、少しだけ登場する男優が、あれ、この俳優、アキ・カウリスマキの映画に出てなかったか?と思ったら「過去のない男」の主演男優だった。