「遠い空の向こうに」 1999年米 評価4
監督:ジョー・ジョンストン
出演:ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパー、ローラ・ダーン他
2021年4月観賞
1957年。ソ連から打ち上げられた人類初の人工衛星を夜空に見た、ウエスト・ヴァージニアの小さな炭坑に住む高校生のホーマーは、炭鉱夫となることが当たり前だった生活から抜け出し、ロケット作りに挑戦する。ロケット作りを通じて、彼は科学フェアで最優秀賞を受賞し、大学の奨学金を得て夢に向かっていく、という実話をもとにした物語。
本作の特徴であり長所は“普通っぽさ”だと思う。主人公(ギレンホール)は瞳が綺麗だが特にカッコよくもなく野暮ったいどこにでもいる高校生という風情。強面の父(クーパー)は息子も炭鉱夫になるものと決めつけてはいるが、全く話に耳を貸さないというほど極端な頑固者でもなく、家族に暴力をふるうこともない。母は息子、夫のどちらの肩を持つでもなく自立した意識の女性。友情も過度にならない程度だし、恋沙汰なんかほんとにあっさりしたもので、メロドラマチックなところは驚くほど少ない。しかし、このような描き方により感じられるのは稀有な“親近感”。
映画には非日常を求めるという考え方もあってしかるべきなのだが、本作にそれはほとんどなく、それがかえって自分が経験してきた高校時代と近い感情をもたらし、そのような“普通っぽい”ことがベースにあるからこそ、そこだけを切り取ればなんてこともないラストの父と息子のちょっとしたイベントが、しみじみとした感涙を呼ぶ。全般を通して“普通っぽい”からこその感動で、非常に珍しい映画だと思う。